関節リウマチについて
①症状
初期は両方の手や足の指の関節が対照的に腫れて、特に「朝のこわばり」を自覚します。
また、人によっては膝関節や股関節などの大きな関節にも病変が進み、水が溜まり、動きにくくなり、 痛みのために日常生活が不自由になります。
どの年代でもみられますが、特に「30~40歳代の女性に多く」発症します。
軽症も重症もあり、症状も多彩です。早めの診断、治療が必要です。
②原因・病態
遺伝的要因や細菌・ウイルス感染などが考えられていますが、原因は不明です。
関節リウマチの病態は、自己免疫疾患と考えられています。
自分の身体の一部(関節の滑膜)を外敵として反応し、滑膜にリンパ系細胞が集まります。
そして、滑膜はさまざまな破壊物質の産生工場となり、軟骨や骨を破壊していきます。
重症の場合、関節は動きにくくなったり、逆にゆるんだりして大きく変形します。
最終的に関節が破壊されつくすと、変形を残して炎症は治まります。
③診断
最新の診断基準を用います。
2010年ACR/EULAR 新分類基準(アメリカ・欧州リウマチ学会2009年)
【関節病変】
(1) 中・大関節に1つ以上の腫脹または疼痛関節あり 0点
(2) 中・大関節に2~10個の腫脹または疼痛関節あり 1点
(3) 小関節に1~3個の腫脹または疼痛関節あり 2点
(4) 小関節に4~10個の腫脹または疼痛関節あり 3点
(5) 少なくとも1つ以上の小関節領域に10個を超える腫脹または疼痛関節あり 5点
【抗体検査(RF または 抗CCP抗体)】
(1) RF、ACPA(抗CCP抗体)がともに陰性 0点
(2) RF、ACPAの少なくとも1つが陽性で低力価 2点
(3) RF、ACPAの少なくとも1つが陽性で高力価 3点
【滑膜炎持続期間】
(1) <6週 0点
(2) ≧6週 1点
【炎症反応】
(1) CRP、ESRともに正常 0点
(2) CRP、ESRのいずれかが異常 1点
上記のスコアの合計が6点以上である症例は「RA確定例 (definite RA)」と診断されます。
④治療
早期の治療が大切です。
【薬物療法】
メトトレキサート(MTX)を第1選択薬とします。
ただし、頻度は高くありませんが、重篤な副作用がみられる場合があるので、 投薬前の検査が必要です。医師の指示をきちんと守って下さい。
MTXが使用できない、あるいは増量できない症例ではタクロリムス(プログラフ)や、 他の経口抗リウマチ薬(DMARDs)、ステロイド剤、抗生物学的製剤(注射薬)、 などを使用します。
肩や膝の痛みに対し、ステロイド剤やヒアルロン酸製剤の関節注射を行うことがあります。
【リハビリテーション・理学療法】
炎症がみられる関節を装具などで支えます。
温めたりして痛みや腫れを減らします。
運動療法で筋力をつけ、関節の動きを維持します。
運動療法はリウマチに合併する骨粗鬆症の治療にも有効です。
【手術療法】
関節鏡(関節の中を観察する内視鏡)を用いて関節内の洗浄や滑膜切除を行います。
炎症によって切れた腱など関節周囲の組織を修復します(腱再建手術、関節形成手術)。
変形やゆるみを生じた関節を使いやすい格好で固定します(関節固定手術)。
背骨がずれて神経を圧迫している場合に圧迫を除いて固定します(脊椎固定手術)。
破壊された肩、肘、手、股、膝、足、などの関節を人工関節に置き換えます(人工関節置換手術)。
*薬物療法の進歩に伴い、関節リウマチの治療方針は数年おきに変化しています。
当院では、最新の治療方針に準じて、当院の施設規模で可能な限りの対応を心掛けています。